そう言えばカンヌ映画祭だったんだっけ?

そんな訳で今年の審査員長のエミール・クストリッツァ自身が大賞を受賞した作品。

アンダーグラウンド [DVD]

アンダーグラウンド [DVD]

「昔、あるところに国があった。」
作中の「裏切り」、「最愛の家族の死」や「兄殺し」などの悲劇は、我々がよく知る旧ユーゴ内戦でおこったことだろう。この映画と現代の悲劇を繋ぐのがタイトルである「アンダーグラウンド」ではないだろうか?第2次世界大戦の時の民族対立を「地下」に封じ込めたティトーやソ連の「死」により、新たに地面から這い出た悲劇。そんな気がしてなりません。
作品を見る限り、監督は民族対立およびそれの先立つ民族独立には否定的のようです。(おかげで公開当時、セルビア主義者とみなされ、西側諸国から批判されていたことを思い出しました。)でも映画自体はラストシーンで示されるとおり、いろいろな悲劇や恨みつらみも忘れて共に暮らしていく世界に対する憧憬はあるもののセルビア主義という民族主義とは一線を画す。
まさに「民族浄化」ではなく「浄化」なのである。その手段を何に求めるか?それは「破壊」これにより現在の悲劇を洗い流し、笑い飛ばし、世界を再構築することを企図しているのだ。劇場公開時のパンフにはシド・ヴィシャスのパンク版「My Way」が好きだと書いています。理由は破壊が時にはポジティブな意味を持つと感じるとのことです。
この劇中にずーと登場するブラスバンドのけたたましい演奏は、悲劇を笑い飛ばすための、破壊するためのパンクなのである。
*注意:本文はGREE(グリー)の掲載文への加筆を加えたものです。