「裏道でもいいからオレは天下の王道を行きたい!王道を行く狗に!強い狗になりたい」(「王道の狗」安彦良和)
明治維新を成し遂げた行動的禁欲は、しゃにむに近代国家の建設に邁進した。そのエネルギーはやがて日本だけではあきたらず当時、清朝末期の中国に、そして李氏朝鮮に向かった。丁度、フランス革命がナポレオン戦争に向かったように、アメリカ独立戦争が西部開拓に向かったように。もはやそのエネルギーは制御できないもののように。
ここが「明治の精神」の、もっと云えば近代日本のターニングポイントだったのではなかろうか?
この問題意識の基に描かれた作品が
- 作者: 安彦良和
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作者の安彦良和氏は第2巻のあとがきで歴史家の松本健一氏との対談の中で次のような問題提起をしている。
幕末というのは、みんなヒーローになりますよね。(中略)ところが明治の元勲たちは、いつからか悪人になってしまう。
そうなのだ。睦奥宗光、福沢諭吉*1や大隈重信*2など特に対アジア外交においては特にこれまで戦ってきた西欧列強の帝国主義の一員となってしまうのだ。こうなる理由としては当時の植民地の再配分が東アジアの中国を中心に行われていて、それに遅れを取らないためには西欧のような「合理的な政策」が必要であったと思われるということと、東アジア諸国が「維新」を実現できないという失望感からであると一般的に説明される。氏はそのターニングポイントを日清戦争*3においている。ここから露骨な帝国主義的侵略の歴史が始まり、1945年に至るという。恐らくそれは事実だし、今なお中国国民の中で暴動が起こっており、*4未だこの国のクビキとなっている。その事実はこの国の人間としてとても悲しい。
でも本当にそれだけなのか?この帝国主義に対する可能性は存在しなかったのか?それは岡倉天心などが提唱した「大アジア主義」である。これはアジア諸邦の国民が手を取り合って西欧列強と対峙しようとする考え方である。政治的にはいち早く近代化を成し遂げた日本をリーダーとして各国の近代化を促進させるということである。*5そのような人物として作中では勝海舟、頭山満*6や宮崎滔天などがいる。
主人公の加納周助は、自由党員として自由民権運動の秩父事件や大阪事件に関わり網走監獄に収監された後、脱走し朝鮮からの亡命者 金玉均に助けられ貫真人(つらぬきまひと)と名乗り、勝海舟らの支援を得て、孫文や東学党の乱を支援し、陸奥宗光や李鴻章などと戦う。最後は孫文とともに三州田で蜂起するところまでで終わる。*7その役割としてはこの蜂起で命を落とした山田良政が一部モデルになっていると思われる。
JOG(319) 山田良政・純三郎兄弟
こんな可能性があったのだ。アジアの連帯と云う馬鹿みたいに夢見たいな理想*8に燃えて散っていた日本人が。もちろんこうゆう人間が居たから侵略は無かったなどと云うつもりはない。我々がすべきことは彼らの意思を継ぎ、もう一度、(もちろん今の状況に併せて)はじめることなのだと思う。*9
いみじくも作中で勝海舟が述べる台詞は大きな警句となっている。
政治というやつはねえ。
五十年先が大事なのサ。
今のことしか考えねえなら八っつあん熊さんで足りらあナ
ではその五十年後はどうだったかというと。。。
それを描いたのが安彦氏の作品
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